妄想垂れ流し野郎

日頃思いついたことを吐き出すマル

便所の落書き@駅

チョーカイベン。

昨今、公共の便所にそう落書きされているらしい。

しかしそんな話は両腕を大きく振り、全力で走りながらもどこか腰の引けたフォームで人混みを駆け抜ける僕にとってそれはどうでも良いことであった。

国分寺駅

黒いスーツに身を包んだ僕を見て、忙しなく歩きまわる人々はきっと就職活動に遅れそうになっている哀れな男であると思ったことだろう。

それは半分正解で半分間違いだ。

僕の就職活動は20分ほど前に終わりを告げている。しかし、哀れな男であるという点は正解だ。

素早くバッグから黒い長財布を取り出す。

高校生の頃に周りの友人がケツポケットに長財布を入れていたのに触発され買ってい以来使い続けている年季の入った相棒のような存在だ。

その財布を改札口に付いているICカード読み取り部分へと当てる。

財布の中に存在するSUICAと呼ばれる支払いを一瞬で終わらせてくれる便利グッズが目の前で行く手を阻む小さな扉を開いてくれるのだ。

手に入れた当初は便利なものだと思ったこれも生活の一部に侵食しきった今となっては欠片もそんなことを思わない日常の一部と化してしまった。

赤い光が見えた。

通常改札を正常に通れる場合は緑色に光るそれは確かに赤く輝いた。

まずい、チャージ金が少なすぎた!

改札を簡単、手軽に開けてくれる緑色のICカード。難点があるとすればチャージした金額がある一定のラインを下回っている場合、金を食わせてやってから出ないと難癖つけて改札口を開けてはくれないのだ。

後で乗越し口でチャージしようと思ったのに!

しかしそんなことを思っても仕方がない。システムがそうである以上徒労な思考であることは間違いないのである。

振り返り駆ける。

そこで鈍痛がやってきた。

僕は立ち止まり、グッと臀部に電気信号を送り引き締める。

目的地がもし”改札内”に存在しなければこんな思いはしないで済んだのに。

怒りの感情がこみ上げてくるが、それが無駄な感情であると理性で判断しフラットな思考へと戻す。

ちょっとずつ歩を進め無事チャージング。再び改札へと向かい無事改札内へと進む。

場所によるが僕の目的場所であるそこは駅によっては内へと進まねばたどり着けない。

僕はやっとの思いでそこへとたどり着いた。

トイレだ。

見るときによっては汚い不浄の場所に感じるが、今現在は天国にもまさる極楽浄土のようだ。

素早く進み扉を開く。

洋式便所が大きく口を開き、鎮座していた。

ベルトを外し、下着ごとスーツを脱ぐ。

そして座った。

……全てを終えた僕は一本のマッキーペンを取り出す。

ゴキゲンな僕は壁にこう記した。

チョーカイベン、と。